NAGANOKEN-KOGEIKAI
県民芸術祭2022参加
第41回 長野県工芸展
松長野県立美術館 県民ギャラリー
令和3年 8月26日(金)~8月30日(火)
午前9時~午後5時 (最終日は午後3時30分終了)
主 催/長野県工芸会、SBC信越放送
共 催/ 長野県、長野県教育委員会、長野県芸術文化協会
後 援/ 信濃毎日新聞社
審査 委員 外 舘 和 子 (多摩美術大学教授) 榎 本 徹 (岐阜県現代陶芸美術館 顧問) 霜 田 英 子 (長野県立美術館学芸課長代理) 早 川 研 夫 (長野県工芸会 会長) (敬称略・順不同) 第41回 長野県工芸展 入賞作品 長野県工芸会長賞 盛籃「紗綾」 小出文生 木 竹 長野県知事賞 薔薇貫入釉大壺「光彩の薔薇」 本間友幸 陶 芸 SBC信越放送賞 練上藍彩文積層螺旋花器 寺島ひとみ 陶 芸 長野県教育委員会賞 いきんとす のびんとす 竹内君則 陶 芸 信濃毎日新聞社賞 かぜ・まとふ 原山桂子 人 形 奨励賞 灰被志野壺 石坂徳平 陶 芸 奨励賞 色象嵌蕎麦紋深鉢 小林陶春 陶 芸 審 査 総 評 審査委員長 外 舘 和 子 コロナ禍の収束が未だ定かでない中、応募総数はやや減少したものの、出品作品の内容は全体に確かな水準を示している。 今年は珍しく、染織が受賞からは漏れたものの、染めの技術・表現力の高さはもちろん、裂き織りなどのタペストリーにも優品が見られた。他の素材領域についても、多数を占める陶芸は勿論、竹工芸、人形、七宝、漆芸、硯、木工(木彫)など幅広く、また、ライ麦のわらを用いて幾何学的に構成した作品など、従来にないタイプも賞候補に挙がり、審査の中で話題となった。 受賞作や賞候補作品は、ベテランと若手が混在しているが、特に、キャリアのある作家が少しも惰性に走ることなく、新鮮な作品で勝負に出てくる点が、この長野県工芸展の良さの一つである。若き作り手たちが、そうした挑戦的なベテランから大いに刺激を受けることが期待されよう。 なお、惜しくも選外となった作品については、まず、陶芸なら陶芸としての説得力を持たせるべく、立体としての仕上げに留意して欲しい。あらゆる工芸は立体である。絵付けや模様で特徴を示す場合でも、前提として、立体として成立していなければならないのである。 長野県工芸会長賞 盛籃「紗綾」 木 竹 小出文生 (長野市) 台のついた円形の盛籃は、縁の止め方などの細部も含め、ベテランらしい端正にして完成度の高い作品である。おもて側は細やかな綸子網代編みでまとめ、グリーン系のグラデーションが効いている。 一方、うら側はテッセン編みで華やかさを醸している。染め分けた竹ひごの発色は、光の加減や見る角度によっても微妙に変化を示し、竹工芸の奥深さを語っている。 外舘 和子 長野県知事賞 薔薇貫入釉大壺「光彩の薔薇」 陶 芸 本間友幸 (安曇野市) 五角形の面取りをほどこした壺である。全体に灰青色の薔薇貫入の釉を施し、面取りの稜線に黄色の釉をほどこしたのが印象的である。 灰色と黄色のコントラストが心地よい。壺の形も面取りも、効果的であり、印象深い作品に仕上がった。 榎本 徹 SBC信越放送賞 練上藍彩文積層螺旋花器 陶 芸 寺島ひとみ (長野市) 練り上げ技法で、積み上げた粘土を螺旋状にねじりあげた形に仕上げた作品である。練り上げには見たことのない形であり、かなり厚い部分もあるので、よくぞ焼き上げたと思わせる作品である。 練り上げは、質のちがう土を使用するので、うまく焼かないと、割れが生じやすい。その部分をよくクリアしたと思わせるのである。できれば、色数がもう少しほしいと思わせる作品であるが、それは無い物ねだりになりそうなので、この作品のすばらしさを評価するにとどめよう 榎本 徹 長野県教育委員会賞 いきんとす のびんとす 陶 芸 竹内君則 (千曲市) 竹内君則はここ数年、出品作のような有機的な造形を試みている。作家は「一人ひとりのくらしに寄り添い、その思いを作品に込めて表現したい。」と語る。 作家と土とのやり取りを通じて、作品の造形が形作られていくそうだ。「土が引き出してくれる」と作家は言う。二度焼きして得られた表面のひっかき傷のような文様は、作品により新鮮なニュアンスを与えてい る。 霜田 英子 信濃毎日新聞社賞 かぜ・まとふ 人 形 原山桂子 (長野市) 風の妖精であろうか。馥郁とした雰囲気の子どもが、気持ちよさそうに、全身で風を受け止めている。両手を上げ、背をそらし、右足のかかとをわずかに上げた姿は、風と戯れているかのようでもある。とりわけ、そのたおやかな子どもの顔の表情が、観る者を和ませる。 台座を木製などではなく、透明なガラスにした点も、涼やかで風の妖精にふさわしい。 外舘 和子 奨励賞 灰被志野壺 陶 芸 石坂徳平 (千曲市) 作者は、灰被を「はいひ」とふりがなをふっている。 のびやかに造形された大型の壺に、上部に灰薬をほどこしたのであろうか、下部の赤い緋色とのコントラストが、きれいな釉調になっている。 形の堅牢さも釉薬の使用法も、すばらしく、雄大さを感じさせる作品になっている。 榎本 徹 奨励賞 色象嵌蕎麦紋深鉢 陶 芸 小林陶春 (長野市) 小林陶春は、陶器に彫った模様に色土を埋め込んでいく「色象嵌技法」に長く取り組んでいる。今回は蕎麦の花を文様に、丁寧な仕事ぶりがわかる作品を提出した。 躯体に等間隔で引かれた直線、その上に赤茶、黄土色の葉、白とうすい紅色の小さな点で表現された花の様子など、落ち着きある色調で、あくまでも作家の誠実な仕事を堪能できる良品。 霜田 英子
審査 委員
外 舘 和 子 (多摩美術大学教授)
榎 本 徹 (岐阜県現代陶芸美術館 顧問)
霜 田 英 子 (長野県立美術館学芸課長代理)
早 川 研 夫 (長野県工芸会 会長)
(敬称略・順不同)
第41回 長野県工芸展 入賞作品
長野県工芸会長賞
長野県知事賞
SBC信越放送賞
長野県教育委員会賞
信濃毎日新聞社賞
審 査 総 評
審査委員長 外 舘 和 子
コロナ禍の収束が未だ定かでない中、応募総数はやや減少したものの、出品作品の内容は全体に確かな水準を示している。 今年は珍しく、染織が受賞からは漏れたものの、染めの技術・表現力の高さはもちろん、裂き織りなどのタペストリーにも優品が見られた。他の素材領域についても、多数を占める陶芸は勿論、竹工芸、人形、七宝、漆芸、硯、木工(木彫)など幅広く、また、ライ麦のわらを用いて幾何学的に構成した作品など、従来にないタイプも賞候補に挙がり、審査の中で話題となった。 受賞作や賞候補作品は、ベテランと若手が混在しているが、特に、キャリアのある作家が少しも惰性に走ることなく、新鮮な作品で勝負に出てくる点が、この長野県工芸展の良さの一つである。若き作り手たちが、そうした挑戦的なベテランから大いに刺激を受けることが期待されよう。 なお、惜しくも選外となった作品については、まず、陶芸なら陶芸としての説得力を持たせるべく、立体としての仕上げに留意して欲しい。あらゆる工芸は立体である。絵付けや模様で特徴を示す場合でも、前提として、立体として成立していなければならないのである。
盛籃「紗綾」 木 竹
小出文生 (長野市)
台のついた円形の盛籃は、縁の止め方などの細部も含め、ベテランらしい端正にして完成度の高い作品である。おもて側は細やかな綸子網代編みでまとめ、グリーン系のグラデーションが効いている。 一方、うら側はテッセン編みで華やかさを醸している。染め分けた竹ひごの発色は、光の加減や見る角度によっても微妙に変化を示し、竹工芸の奥深さを語っている。
外舘 和子
薔薇貫入釉大壺「光彩の薔薇」 陶 芸
本間友幸 (安曇野市)
五角形の面取りをほどこした壺である。全体に灰青色の薔薇貫入の釉を施し、面取りの稜線に黄色の釉をほどこしたのが印象的である。 灰色と黄色のコントラストが心地よい。壺の形も面取りも、効果的であり、印象深い作品に仕上がった。
榎本 徹
練上藍彩文積層螺旋花器 陶 芸
寺島ひとみ (長野市)
練り上げ技法で、積み上げた粘土を螺旋状にねじりあげた形に仕上げた作品である。練り上げには見たことのない形であり、かなり厚い部分もあるので、よくぞ焼き上げたと思わせる作品である。 練り上げは、質のちがう土を使用するので、うまく焼かないと、割れが生じやすい。その部分をよくクリアしたと思わせるのである。できれば、色数がもう少しほしいと思わせる作品であるが、それは無い物ねだりになりそうなので、この作品のすばらしさを評価するにとどめよう
いきんとす のびんとす 陶 芸
竹内君則 (千曲市)
竹内君則はここ数年、出品作のような有機的な造形を試みている。作家は「一人ひとりのくらしに寄り添い、その思いを作品に込めて表現したい。」と語る。 作家と土とのやり取りを通じて、作品の造形が形作られていくそうだ。「土が引き出してくれる」と作家は言う。二度焼きして得られた表面のひっかき傷のような文様は、作品により新鮮なニュアンスを与えてい る。
霜田 英子
かぜ・まとふ 人 形
原山桂子 (長野市)
風の妖精であろうか。馥郁とした雰囲気の子どもが、気持ちよさそうに、全身で風を受け止めている。両手を上げ、背をそらし、右足のかかとをわずかに上げた姿は、風と戯れているかのようでもある。とりわけ、そのたおやかな子どもの顔の表情が、観る者を和ませる。 台座を木製などではなく、透明なガラスにした点も、涼やかで風の妖精にふさわしい。
奨励賞
灰被志野壺 陶 芸
石坂徳平 (千曲市)
作者は、灰被を「はいひ」とふりがなをふっている。 のびやかに造形された大型の壺に、上部に灰薬をほどこしたのであろうか、下部の赤い緋色とのコントラストが、きれいな釉調になっている。 形の堅牢さも釉薬の使用法も、すばらしく、雄大さを感じさせる作品になっている。
色象嵌蕎麦紋深鉢 陶 芸
小林陶春 (長野市)
小林陶春は、陶器に彫った模様に色土を埋め込んでいく「色象嵌技法」に長く取り組んでいる。今回は蕎麦の花を文様に、丁寧な仕事ぶりがわかる作品を提出した。 躯体に等間隔で引かれた直線、その上に赤茶、黄土色の葉、白とうすい紅色の小さな点で表現された花の様子など、落ち着きある色調で、あくまでも作家の誠実な仕事を堪能できる良品。
入選者一覧
会員…長野県工芸会会員
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菊華根来螺鈿鉢