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会 史
平成30年度
第38回長野県工芸展

第1~37
長野県工芸展

会員作品集

県民芸術祭2018参加

第38回 長野県工芸展

松本 ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)
1Fギャラリー

平成30年8月29日(水)~9月2日(日)

午前9時~午後5時 (最終日は午後4時終了)

主 催/ 長野県工芸会・ SBC信越放送

共 催/ 長野県・ 長野県教育委員会・ 長野県芸術文化協会

後 援/ 長野市、長野市教育委員会 信濃毎日新聞社

38dm


 審査 委員

榎 本  徹 (岐阜県現代陶芸美術館 顧問)

鈴 木 潔  (滋賀県長浜アートセンター館長)

外 舘 和 子 (多摩美術大学教授)

田 中 正 史 (長野県信濃美術館学芸課長)

早 川 研 夫 (長野県工芸会 会長)

(敬称略・順不同)

審 査 講 評

審査委員長 鈴 木 潔


 第38回長野県工芸展は前年よりも1割ほど多い104点の応募があり、そのうち94点が入選した。出品数を減少させる公募展が少なくない中で今回の増加は立派である。しばらく途絶えていた漆工、金工、木彫のエントリーがあったのも喜ばしく、今後もこの傾向が続くことを祈念したい。

 私が審査員に加わってから既に28年が経過した。この間に世代交代が随分と進んだが、長野県工芸展の独自色は変わることなく、連綿と継承されているように思う。いくつか例をあげるならば、緑濃き信州の大地に根差したゆとりある生活環境が育んだおおらかさ、いたずらに斬新を求めない堅実な仕事の積み重ねから滲み出る落ち着き、温故知新の懐かしさなど。これらは世代を超えて多くの作品に認められる特徴である。諸県の工芸がともすればインターナショナルな無国籍の領域で発言を増しているのとは対照的に、グローバル化と一線を画す地域性の堅持、浮ついたところがない体質は、誤解を恐れずに想像すれば、頑固といわれる信州人の気風が意識的に、ないしは意識下の領域で、造形に影響を及ぼした結果といえるだろうか。

 本展の出品作は、少なくともデザイン上は保守的な傾向が目立つが、マンネリ化と同義ではない。そのことは注記しておきたい。今回最高賞を受賞した染織作品は過去に受賞を重ねた大家によるものだが、熟練の職人芸を基本に置きつつ、伝統に安住することなく常識を突き破るダイナミズムの力強さ、表現意欲の強さに審査員一同、感服する他はなかった。老境に入られてもますます旺盛なチャレンジ精神を発揮される姿勢は、会員諸氏にとってよい刺激になるだろう。ベテラン作家ほど新しい創意工夫の研究に余念がないのは長野県工芸展の美質である。眼前に現れた未知の作家の手になる新鮮な造形が、実は例年とは異なる仕事で審査を受けた重鎮の仕業と判明した時のインパクト。あっと驚く瞬間は今年もあった。そのような体験が毎年待ち受けているのは頼もしい。長野県工芸展は審査員にとって喜びであり、期待であり、楽しみである。

 


第38回 長野県工芸展 入賞作品

長野県工芸会長賞

手描友禅訪問着 砂丘
小山仁郎
染織

長野県知事賞

崖屋妄想・にぎやかな昔
木村不二雄
染織

SBC信越放送賞

坂口禮子
陶芸

長野県教育委員会賞

練上花紋輪花組皿
寺澤里美
陶芸

信濃毎日新聞社賞

朱漆大盤
小坂 進
漆芸
北澤美術館賞
花宿
原山桂子
人形
奨励賞
還るべきところ
竹内君則
陶芸
奨励賞
炎暑の落日
西澤伊智朗
陶芸

 


長野県工芸会長賞

手描友禅訪問着 砂丘 小山仁郎

手描友禅訪問着 砂丘 (染織)

小山仁郎 (長野市)

 広大な砂丘の起伏豊かな連なりが、渋みのある色調と、ダイナミックな構図で捉えられている。 近づいて観れば、砂丘の連なりのはざまには、 細い描線で柵が表現されており、その柵が、盛り上がる砂丘のうねりを押さえるかのようである。

  手描友禅ならではの繊細な描写と染の濃淡、力強い構図が、着物のサイズを超えて空間の拡がりを想わせる迫力ある作品である。


外舘和子

 

 


長野県知事賞

崖屋妄想・にぎやかな昔	木村不二雄

崖屋妄想・にぎやかな昔 (染織)

木村不二雄 (須坂市)

 木綿地にろうけつ染で墨、淡彩を施したパネル。 木曽川沿いに建つ木曽福島の崖屋の実景を元に、窓辺に古今東西の歴史上の有名人を嵌め込んでいる。

  弁慶と牛若丸、武田信玄と上杉謙信、信長と秀吉と家康、二宮尊徳、バッハとベートーヴェンとブラームス、ダリ、ドビュッシーと北斎、レオナルド・ダヴィンチとミケランジェロとラファエロ、ゴッホとムンクとモジリアニ、マネ、写楽、チャップリン、マリリン・モンローのスカートを吹き上げる風神雷神、スターリンとチャーチルとルーズベルトなどなど。川辺には桃太郎や浦島太郎、金太郎もいる。

  墨の濃淡のコントロールが巧妙で石垣などの立体感の描写にも感心する。 

鈴木 潔

 


SBC信越放送賞

宴 坂口禮子

(陶芸)

坂口禮子 (長野市)

 大きい皿が1枚、小さい皿が4枚からなる組皿である。砂子を散らしたような薬は「麦の穂」を使用したという。そのおかげで、品のいい質感が得られた。

  折り返した部分には灰釉系の薬を使い、さわやかな発色を得た。大きな皿と小さな皿は、焼成温度の違いにより、釉薬の発色に違いが出た。これも、作品に メリハリをつけるうえで、効果的であった。

 組皿というジャンルでは、同じ大きさにそろえる必要はない。各自の工夫により、大きさが違ったほうが、変化を楽しめ、メリハリがつく。工夫次第である。大きさを違えた工夫と、豊かな質感、それにアクセントとしてあしらわれた透明釉、これらが効果を上げ、受賞につながった。公募展における組皿の醍醐味といえよう。


榎本 徹

 


長野県教育委員会賞

練上花紋輪花組皿 寺澤里美

練上花紋輪花組皿(陶芸)

寺澤里美 (長野市)

 

 顔料を練り込んだ色粘土を組み合わせて形成した、練上の技法による組皿である。

 長野県出身の陶芸家・人間国宝の松井康成の作品で知られる技法であるが、この作品では、異なる濃度の色粘土を、幾層にも重ね合わせることで作り上げた美しいグラデーションによって花と葉をリズミカルに表現している。

 組皿であるが、それぞれの皿で微妙にモティーフの配置が変えられており、全体として見たときの意匠にも工夫が凝らされている。

                   田中正史

 


信濃毎日新聞社賞

朱漆大盤 小坂進

朱漆大盤(漆芸)

小坂 進 (塩尻市)

 
 朱の漆を塗り込んだシンプルな大盤である。なんの変哲もない形状の作品であるが、とにかく、盤全体に塗り上げられた朱漆の仕上げが美しい。表面に、埃のあとや疵などはまったく見えず、全体に均一な厚さで平滑に塗り上げられた、この作品は、相当に高度な技量によると思料される。

 簡潔な造形であっても、熟練の技術によれば、他の技巧を凝らした作品の間にあっても大きな存在感を示すことができる、一つの好例といえるだろう。

                   田中正史

 


北澤美術館賞

花宿 原山桂子

花 宿(人形)

原山桂子 (長野市)

 ふっくらと丸みのある蕾がわずかに開き、花の精のような童子がまどろむような表情でしゃがんでいる。 作者はたまたま友人宅で見たオオヤマレンゲの蕾の美しさに魅せられ、「この花の中に住んでみたい」と思ったという。

  童子の無垢なポーズや、淡い紫色の髪はいかにも花の住人にふさわしい。円い台座もこの人形のファンタジックな世界に合致している。

            外舘和子


奨励賞

還るべきところ 竹内君則

還るべきところ(陶芸)

竹内君則 (千曲市)

 
 

 炭化した火炎のイメージであろうか。どの角度から見てもよく、変化に富んだ流動する曲線美が力強い。部分的に土色を発色させたアクセントも効果的である。

 作者の思い描いたイメージを具現化する手びねりならではの自在闊達な造形力によって、縄文土器を連想させる「うねり」や「たくましさ」に溢れた世界が出現している。


鈴木 潔

 

 

 


奨励賞

炎暑の落日 西澤伊智朗

炎暑の落日(陶芸)

西澤伊智朗 (長野市)

 
 
 割れた果実の中から廃墟と化したバベルの塔のような建築物が立ち上がる。人間が生み出した文明のはかなさ、脆さの象徴だろうか。

  土の味わいを活かした荒々しいテクスチュアが滅びの美、風化して土に還る万物流転の世界観を提示している。再生への祈りの形象といえる作品である。 

鈴木 潔

 

 


入選者一覧

会員…長野県工芸会会員

緑背景 紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品

 

象嵌幾何文壺 会員 小林聖生 陶 芸
布目泥彩皿「秋の名残り」 会員 廣瀬弘司 陶 芸
亜鉛結晶釉花器 会員 本間友幸 陶 芸
粉引銀彩花器 会員 本間友幸 陶 芸
清涼 会員 青木一浩 陶 芸
地文の器 会員 荻原恒夫 陶 芸
カプリ島の香り 一般 月岡彰夫 陶 芸
志野茶碗 会員 宇都宮良幸 陶 芸
焼締手付角花生 会員 畔上清司 陶 芸
梅花象嵌壺 ~月夜に誘われて~ 一般 松井都矢子 陶 芸
金備前 カップ&ソーサー 一般 松井都矢子 陶 芸
象嵌線文鉢 会員 西村純一 陶 芸
碧釉香炉 会員 西村純一 陶 芸
月白鈞窯花器 会員 土屋 晃 陶 芸
氷裂貫入青瓷輪花鉢 会員 土屋 晃 陶 芸
炭化焼花器「A+B」 会員 吉田美恵子 陶 芸
花器「白い記憶」 会員 吉田美恵子 陶 芸
焼締四耳壷 会員 大石 操 陶 芸
桃氷裂大皿 会員 大久保利子 陶 芸
バラ唐草中鉢 会員 大久保利子 陶 芸
花香炉 会員 谷口節子 陶 芸
あふれ出る思い、花瓶 会員 谷口節子 陶 芸
色象嵌鷺草文深鉢 会員 小林陶春 陶 芸
和紙染草文鉢 会員 吉川孝子 陶 芸
飴柚白流し水指 会員 吉川孝子 陶 芸
Birth 一般 酒井弘幸 陶 芸
秋日和 会員 浜 利秋 陶 芸
揺想 会員 浜 利秋 陶 芸
野菊紋刷毛目大皿 会員 松本邦之 陶 芸
練上花紋輪花組皿 会員 寺澤里美 陶 芸
白流黒飴花器 会員 川合皓 陶 芸
薫風戸隠 会員 北沢 幸男 陶 芸
焼締花入 会員 北沢 幸男 陶 芸
青磁輪花鉢 会員 宮澤衛 陶 芸
紅志野しののめ 会員 宮澤衛 陶 芸
浅葱水差 ~森の静けさ~ 会員 荒井寿子 陶 芸
浅葱水差 ~春の芽生え~ 会員 荒井寿子 陶 芸
呉須絵市松文様壺 会員 愛甲宏明 陶 芸
呉須絵大皿 会員 愛甲宏明 陶 芸
彩磁薔薇蓋物 会員 篠田弘明 陶 芸
ドレミの器 (食器琴) 会員 篠田弘明 陶 芸
吹墨白樺文六角組鉢 会員 早川研夫 陶 芸
吹墨桜散る図大皿 会員 早川研夫 陶 芸
焼締茶碗 会員 原民雄 陶 芸
焼締黒茶碗 会員 原民雄 陶 芸
自然釉水指 会員 石坂徳平 陶 芸
紅志野抹茶碗 会員 石坂徳平 陶 芸
飛文彩色鉢 会員 堀内珠実 陶 芸
油滴天目大鉢 会員 堀内珠実 陶 芸
還るべきところ 会員 竹内君則 陶 芸
果実のピッチャー 会員 西澤伊智朗 陶 芸
炎暑の落日 会員 西澤伊智朗 陶 芸
志野水指 会員 小池智久 陶 芸
緋色急須 会員 安藤哲夫 陶 芸
焼締急須 会員 安藤哲夫 陶 芸
予兆<2018> 会員 中山 康 陶 芸
焼締壺 会員 野池光昭 陶 芸
流動Ⅲ 会員 野池光昭 陶 芸
飴釉茶碗 会員 宮澤弘幸 陶 芸
白紋花瓶 会員 宮澤弘幸 陶 芸
化粧文発泡釉壺 会員 高地善之 陶 芸
呉須兎文水指 一般 仙田貴子 陶 芸
白釉線刻文角皿 一般 仙田貴子 陶 芸
会員 坂口禮子 陶 芸
銀化曜変天目 会員 丸山正行 陶 芸
曜変天目 会員 丸山正行 陶 芸
釉裏紅象嵌壺 「環」 会員 篠田明子 陶 芸
紫陽花紋様象嵌四方組皿 会員 木内洋介 陶 芸
黒化粧線文深鉢 会員 水野雅史 陶 芸
練上薔薇文楕円組器 会員 寺島ひとみ 陶 芸
華芯 会員 大森國子 陶 芸
厳寒の朝 会員 大森國子 陶 芸
奥信濃苗場新秋 会員 塚田光弘 陶 芸
会員 田中無斎 陶 芸
蝙蝠紋型染着物 会員 佐藤亜都子 染 織
繁茂 会員 木下紀子 染 織
夏の朝 屏風 一般 小山仁郎 染 織
手描友禅訪問着 砂丘  一般 小山仁郎 染 織
崖屋幻想・四季の物語 会員 木村不二雄 染 織
崖屋妄想・にぎやかな昔 会員 木村不二雄 染 織
懸け橋 一般 山口義久 染 織
瞑想 一般 星野幸恵 人 形
竜の子 一般 星野幸恵 人 形
まとう 一般 湯田明美 人 形
風の童子 一般 湯田明美 人 形
花宿 会員 原山桂子 人 形
朱漆大盤 一般 小坂進 漆 芸
一閑張漆筥 一般 小坂進 漆 芸
花結びの手提げかご 一般 高澤隆左子 木 竹
よろけ編みの器 一般 高澤隆左子 木 竹
「信濃の国」は 一般 徳武悦二 木 竹
吉祥 一般 増田晶子 金 工
有線七宝花器「花散里」 会員 月岡栄子 諸工芸
森のまん中へ 会員 平林義教 諸工芸

 

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品

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