NAGANOKEN-KOGEIKAI

県民芸術祭2015参加

第35回 長野県工芸展

松本市美術館 市民ギャラリーA・B
松本市美術館 市民ギャラリーA・B

平成27年9月30日(水)~10月4日(日)

午前9時~午後5時 (最終日は午後4時終了)

主 催/ 長野県工芸会・ SBC信越放送

共 催/ 長野県・ 長野県教育委員会・ 長野県芸術文化協会

後 援/ 松本市・ 松本市教育委員会・ 信濃毎日新聞社
市民タイムス


 審査 委員

 榎 本   徹 (岐阜県現代陶芸美術館 館長)

 外 舘 和 子 (工芸評論家、愛知県立芸術大学非常勤講師)

 鈴 木  潔   (滋賀県長浜アートセンター館長)

 伊 藤 羊 子 (長野県信濃美術館 学芸課長)

 小 出 文 生 (長野県工芸会 会長)

(敬称略・順不同)

 

審 査 講 評

審査委員長 榎本 徹 

   全体として、出品作は少なかったが、力作ぞろいで、会場全体では充実した印象を受ける。今年はとくに染織作品が粒ぞろいで、また表現方法も、テーマもちがい見ごたえがあった。その結果が受賞作品にも表れ、染織作品に上位受賞が重なった。

 出品数は多かったが、陶芸が今年は不振であったが、作品そのものの質が落ちたというわけではない。ただ、陶芸作品に、迷いがうかがわれるものが多く、その結果、やり過ぎたと感じさせるものが目立ったことも事実である。

 あくまで、素直で、おおらかな表現が求められる。器をゆがませたり、不必要な装飾を試みるなどは、作品全体を壊すことがあるので、厳に慎むべきである。構えが大きく、装飾は単純明快、できれば、よけいな飾りは、ない方がよいということを肝に銘じてほしい。例えば、茶碗などは、形が肝心で、装飾を評価されるようなことは少ないと思って欲しい、もちろん壷にしても、鉢にしても同様である。
 他のジャンルにも言えることだが、伝えたい思いを、一つに絞りきることができるかということが、問われていると思って欲しいものである。

 


第35回 長野県工芸展 入賞作品

長野県工芸会長賞

草木染 訪問着「砂丘」
小山仁郎
染織

長野県知事賞

昭和の夏の物語(ろうけつ染)
木村不二雄
染織

SBC信越放送賞

艶消し釉裏紅象嵌壷
篠田明子
陶芸

長野県教育委員会賞

吹墨白樺林図鉢
早川研夫
陶芸

信濃毎日新聞社賞

からむし曼荼羅「鎮魂」
山口善久
染織
北澤美術館賞
風の族
原山桂子
人形
松本市長賞
夕暮れの食物連鎖
西澤伊智朗
陶芸
松本市教育委員会賞
練上花紋長角皿
寺澤里美
陶芸

 


長野県工芸会長賞

草木染 訪問着「砂丘」(染織)

小山仁郎 (長野市)

 きもののフォルム一杯に、裾から肩へ、幾重もの稜線を重ならせながら、山並みが登ってゆく。 山々の稜線に沿って杭のようなものが走り、同系色の山並みながら、変化に富んだ風景となっている。

 個々の山は、赤茶から白へ、豊かな濃淡によって立体的に表現され、さらに糸目の白い筋が砂丘の亀裂のごとき、険しい表情を示している。
 飛ぶ鳥もまた単純化され、作品全体に寂寥感を漂わせる。
 友禅の糸目糊の線を駆使しつつ、抑えた色調の中にドラマティックな世界を捉えた優品である。

外舘和子

 


長野県知事賞

昭和の夏の物語(ろうけつ染)(染織)

木村不二雄 (須坂市)

 

 画中に東京オリンピックのポスターがあるところをみると昭和39年前後の情景であろうか。左側のパネルは日中を、右側には夜景を描いている。
 細部の描写に練達の技を示す一方、離れて眺めた時の全体の収まりの良さも特筆すべき出来で、構成力の冴えが見事である。
 煩雑になりがちな細密画を穏やかなグレーのトーンでまとめた結果、うるさくならずノスタルジックなモノクロ写真を見るような懐かしい心象風景に仕上げている。            

鈴木 潔

 


SBC信越放送賞

艶消し釉裏紅象嵌壷(陶芸)

篠田明子 (池田町)

 すこし肩の張った大らかな壷である。そこに、掻き落し風に白い文様が施されている。白い文様は、白い色調と相まって、おおらかさを醸し出している。
 中国の古い作品に唐子で白い文様を施したものがあるが、雰囲気は似ているが、文様を不定形にしているため、より現代性を獲得している。
 壷の形を単純にしたことや、白を艶消しにしたことも効果的であった。 作品全体に感じさせるおおらかさを何よりも評価したい。

榎本 徹

 


長野県教育委員会賞

吹墨白樺林図鉢(陶芸)

早川研夫 (松本市)

 
 

ゆがみなく拡がる磁器の大鉢。 帯状に走る青い白樺の林は、濃淡のコントラストを形成しながら、鉢のサイズを超えて空間を形成していく。
 帯模様は、鉢の内部にあっては、互い違いに余白を生かし、側面には帯がやや不規則に交差するように配して文様構成に変化をつけている。
 白樺の木と余白の白、および呉須の青という限られた要素で、爽快にして清々しい世界を築いている。

外舘和子

 


信濃毎日新聞社賞

からむし曼荼羅「鎮魂」(染織)

山口善久 (長野市)

 麻の一種からむしを使い、もじり織などの特殊技法を併用して織り上げた作品である。 シンプルな市松文に円を組み合わせて一部白黒を反転させたデザインは、仏教美術の曼荼羅を下敷きにしている。
 抑制を効かせたモノトーンの色彩構成が寡黙な静謐感を漂わせる秀作といえる。
 材料のからむしは福島県昭和村産。
 東日本大震災被害者への鎮魂の意味を込めた作品である。


鈴木 潔

 


北澤美術館賞

風の族(人形)

原山桂子 (長野市)

 
 

 瑠璃色の羽を付けた小さな男の子が、目をつむり、まるで風の匂いを嗅いでいるように佇んでいる。
表情は、あどけなくも瞑想するかのごとき品格を持つ。これは、尾長鳥の精という。
 カラフルな淡い色のガラス台が、この愛らしい妖精が、軽やかな風のなかにいることを感じさせる。
このガラスは、作家がかつて小樽で求めた、北一硝子の皿という。
 この妖精もまた、巧みな立体表現に定評のある作者の連作ともいえるのではないだろうか。

伊藤 羊子

 


松本市長賞

夕暮れの食物連鎖(陶芸)

西澤伊智朗 (長野市)

 
 

 作品の大きさと、そこに表現された内容の緻密さに敬意を表したい。土の使い方や、質感の表現に、作者がこのような技法を自己のものとしていることをよくうかがわせる。
 土の有機性を熟知し、少し不気味ではあるが、表現したい内容を過不足なく、観る人に伝えることができるテクニックを持つことは容易ではない。そのテクニックを自己のものとし、テーマを展開できる作者の力量を評価したい。

榎本 徹

 

 

 


松本市教育委員会賞

練上花紋長角皿(陶芸)

寺澤里美 (長野市)

 
 

 カラフルな薔薇を表した華やかな作品である。
練上は、モチーフのパーツを組み合わせて叩き締め、金太郎飴のように表裏に同じ模様を表す技法で、亀裂が入りやすく制作には高い技術を必要とする。
 長野県出身の人間国宝、松井康成氏以降、近年人気の技法である。
 作者は皿の薄さにもこだわり、美しい長角皿として軽やかな作品にまとめている。


伊藤 羊子

 


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入選者一覧

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品

渦状青文六角鉢
一般
愛甲宏明
陶 芸
藍かすり文様壺
一般
愛甲宏明
陶 芸
天を目指す
一般
青木一浩
陶 芸
すこやかに
一般
青木博子
人 形
雨上がりの黄昏
会員
赤津律子
人 形
輝け未来へ
会員
赤津律子
人 形
Planet
会員
荒井寿子
陶 芸
Grounding
会員
荒井寿子
陶 芸
会員
安藤哲夫
陶 芸
焼締急須
会員
安藤哲夫
陶 芸
ポンペイの大車輪
一般
臼田文子
染 織
王の誕生
会員
宇野修栄
陶 芸
陶小紋新惑星
会員
大石 操
陶 芸
志野水指
会員
大石 操
陶 芸
鉄釉線文鉢「赤い月」
一般
大久保利子
陶 芸
黒釉流し鉢「流れる」
一般
大久保利子
陶 芸
かぐや
会員
大森國子
陶 芸
いわし雲
会員
大輪冨美子
人 形
会員
大輪冨美子
人 形
赤和土黒釉引き出し茶碗
会員
荻原恒夫
陶 芸
志野茶碗
会員
荻原恒夫
陶 芸
大香炉
一般
奧野祐二
陶 芸
野葡萄図花器
一般
垣内秋男
陶 芸
松代鉄絵碗
一般
垣内秋男
陶 芸
憩う
会員
金井すみ江
人 形
燻し黒窓絵花器
会員
川合皓
陶 芸
天目釉細波壷
会員
川合皓
陶 芸
彩濃淡竹節紋様練込象嵌花器
会員
木内洋介
陶 芸
彩紫陽花紋様象嵌八角組皿
会員
木内洋介
陶 芸
BULBⅢ
会員
北沢幸男
陶 芸
花 ひらく
会員
木下紀子
染 織
昭和の夏の物語(ろうけつ染)
会員
木村不二雄
染 織
鳥を彫る①
一般
木村由里子
陶 芸
観月の水指
会員
小池智久
陶 芸
七宝紋楕円盛藍
会員
小出文生
木 竹
自然釉・鼎・器
会員
高地善之
陶 芸
色象嵌鷺草文深鉢
会員
小林陶春
陶 芸
象嵌幾何紋壺
一般
小林聖生
陶 芸
風呂先屏風「野分」
一般
小山仁郎
染 織
草木染 訪問着「砂丘」
一般
小山仁郎
染 織
静寂の町
会員
坂口禮子
陶 芸
藍型染浴衣「方楽」
会員
佐藤亜都子
染 織
思索
会員
佐藤今朝寿
陶 芸
会員
佐藤今朝寿
陶 芸
艶消し釉裏紅象嵌壷
会員
篠田明子
陶 芸
SEKIJITSU
会員
篠田弘明
陶 芸
織部に捧ぐ
会員
篠田弘明
陶 芸
遺跡より
一般
菅内理夏
諸工芸
GENTEN
一般
高橋智恵子
陶 芸
生き物になろうとした
会員
竹内君則
陶 芸
夜空に想う
会員
竹腰米子
人 形
金彩透かし花入れ
会員
谷口節子
陶 芸
織部透かし花入れ
会員
谷口節子
陶 芸
有線七宝蓋物「晴琉」
会員
月岡栄子
諸工芸
「ハーモニー」
一般
月岡唐十郞
陶 芸
月白渦潮紋皿
会員
土屋 晃
陶 芸
流線のざわめき 15・03
一般
坪内真弓
陶 芸
練上花紋長角皿
会員
寺澤里美
陶 芸
染付組鉢「爽風」
会員
寺澤里美
陶 芸
練上薔薇文八角大皿
会員
寺島ひとみ
陶 芸
紬織着物「夜桜」
会員
中林康江
染 織
雲と森と
会員
中山 康
陶 芸
山ぶどうのカゴバック2
一般
南海文枝
木 竹
夕暮れの食物連鎖
会員
西澤伊智朗
陶 芸
シナノノ
一般
野池征永
諸工芸
焼締大皿
会員
野池光昭
陶 芸
織部花入れ
会員
野池光昭
陶 芸
灰釉水指
一般
野沢尚志
陶 芸
桐に鳳凰
一般
濱完治
染 織
杜の壺
会員
浜利秋
陶 芸
江華
会員
浜利秋
陶 芸
吹墨白樺林図鉢
会員
早川研夫
陶 芸
吹墨鷺草市松模様鉢
会員
早川研夫
陶 芸
風の族
会員
原山桂子
人 形
黒泥イチョウ押紋角皿
一般
樋口健太
陶 芸
黒泥イチョウ押紋角組皿
一般
樋口健太
陶 芸
七宝 猫型香炉
会員
平林義教
諸工芸
掻落し泥彩鉄線文壺
一般
廣瀬弘司
陶 芸
掻落し泥彩山法師文鉢
一般
廣瀬弘司
陶 芸
豊年満作
一般
藤澤 勇
陶 芸
とれたー
一般
星野幸惠
人 形
鉄釉掛分大鉢
会員
堀内珠実
陶 芸
鉄釉渦文壺
会員
堀内珠実
陶 芸
赤志野水指
会員
本間友幸
陶 芸
青釉組皿
会員
本間友幸
陶 芸
しこふんじゃった
一般
松田順子
人 形
刷毛目紋葡萄絵大皿
会員
松本邦之
陶 芸
刷毛目紋樺花入
会員
松本邦之
陶 芸
鉄釉線文鉢
会員
丸山正行
陶 芸
銀彩曜変鉢
会員
丸山正行
陶 芸
花器ビーナス
一般
三村貞夫
陶 芸
焼〆抹茶碗
会員
宮澤弘幸
陶 芸
急須
会員
宮澤弘幸
陶 芸
変動
一般
向山智充
陶 芸
かなた
会員
百瀬玲子
人 形
やられた
会員
百瀬玲子
人 形
からむし曼荼羅「鎮魂」
一般
山口善久
染 織
惜春
一般
湯田明美
人 形
一歩
一般
湯田明美
人 形
和紙染麻ノ葉文鉢
一般
吉川孝子
陶 芸
炭化焼「黎明」
会員
吉田美恵子
陶 芸

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品


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